ストーリー

この世には『変態』と呼ばれる人たちがいる。
変態学の古典として広く知られる「変態衍義(へんたいえんぎ)」から、世界的に有名な序文から引用すれば――

《この生命溢れる世界にあって、性的魅力に溢れ、性的興奮を激発せしめ、加えて肉欲旺盛なことは美徳至極である。
そして、累代の祖先より子孫繁栄を課された種族の最新の末裔として、真っ当に健全な姿である。
よって『変態』とは、そのような健全な魅力と生命力を備えた人々の敬称・美称として用いるものである》


――ようするに、変態とはどエロくてどスケベな人たちだ。

そしてこの春、念願叶って変態学の最高学府とも言われている聖賜(セイシ)大学に入学したオレは、今後のフィールドワークも兼ねて変態のいる家庭に下宿できるよう、紹介を性務署に申請していた。

それからほどなく送られてきた下宿先の紹介状。そこにある名前を見てオレは度肝を抜かれる。

――前園千華――

我が目を疑う。
彼女の存在が“HENTAI”を世界共通の用語にしたとも言われる伝説の変態……
緊張状態にあった二つの国の指導者を3Pによって穴兄弟にすることで、第三次世界大戦の勃発を未然に防ぎ
「性交外交の切り札」と呼ばれた、あの前園千華女史……?!

オレが下宿することになったのは、変態について少し詳しい人ならば大抵知っているほどのカリスマ変態一家、前園家。

前園千華と、その四人の娘。

五者五様、際立った魅力を持つ五人の変態。

これは、変態という人々について深く知ることのできる最高の環境を得たオレが、
一つ屋根の下でエロくてスケベな五人の変態たちと一緒に暮らし、
変態の極普通の日常を実体験とともに見つめるドキュメンタリーである。

キーワード

変態

性的昂奮を覚える行為を日常の中で極普通に行う女性の美称。
「変態」という才能のある人間として憧憬、敬意を持たれることもある。
息を吸うように行為を行うのが普通であるため本来形式的なものは存在しないが、
格式や流儀を付与して流派を名乗る者もいる。
呼吸するのも同然の行為であるため、いつなんどきでも変態の行う行為、
変態と行う行為、変態に行う行為が犯罪であろうはずもない。

前園一家

満香(マンコウ)町に在住する一家。
母と四姉妹の五人暮らし。
四姉妹はそれぞれ父親不明。
少し詳しい人間なら一度は聞いたことがあるカリスマ変態一家として有名。